平成という時代が終わろうとしている。一つの時代を振り返る時、そこには革新的なもの、伝統的なもの、様々なものがそれぞれの色を持って根付いていることに気付く。このコーナーでは多種多様かつ変容的な現代社会の中で、静かに時代を繋いできた伝統や技術、それらを伝える人に光を当てる。次の時代が終わる時、またこのコーナーを見返してもらえるように。
取材&文/本多千尋

オーダーメイド家具『百年家具 KIJIN 』

石川 玄哉 / Ishikawa Genya

1985年 神奈川県生まれ
株式会社KIJIN 代表
大学卒業後専門商社を経て2013年 KIJINとして独立。百年続く木のオーダーメイド家具を中心に、店舗や施設における空間演出も得意とする“木のスペシャリスト”

(カバー写真)「田中屋酒造店 水尾 ショップ内装デザイン」木製のプロダクトのみならず空間演出も KIJIN では行っている、空間へ印象的かつ自然に木の質感が溶け込んでいる
の人」と書いて“木人”。皆彼のことをそう呼ぶ。100年使えることを価値として木に特化した、木のオーダーメイド家具 『 百年家具 KIJIN 』代表 / 石川 玄哉氏を指した言葉だ。次の百年を目指す家具とはいったいどういうものだろう?そんな疑問を抱きながらインタビューを進めると、穏やかそうな風貌から小気味よく芯の強いメッセージが生まれてくる。「世の中一般的に“かっこいい”や“かわいい”という瞬間作用にかける商品は溢れているけれど、我々は違う。そこにお客さまの思いや体験値が乗って初めて価値となるんです、そしてそれが時代を超えていった時に人が幸せになれると思っています、でなければオーダーメイドなんて価値がない」と彼は言う。※1.林野庁の都道府県別森林率・人工林率(平成29年3月31日現在)によれば、日本の国土におけるおよそ67%は森林なのだ、周りを見回してみてもテーブルや椅子、箸などの生活に欠かせないものから子供のおもちゃまで、我々の生活は木と共にあると言っても過言ではない。しかし時代の変遷と共にサザエさんのような拡大家族から核家族化が進み、木のプロダクトにも“何世代にも渡りずっと使えるもの”より“今の生活にフィットした今まさに必要なもの”が求められる時代となった。いわゆる「大量生産 大量消費」社会である。かくいう彼も当初はその渦中にいたが、ある時「そもそも大量生産 大量消費と当たり前に叫ばれ何の違和感も無いが、それでは一生モノのプロダクトにならない。本当にプロダクトとはそれで良いのだろうか」という思いに立ち返ったという。
 そんな彼には今でも忘れられない瞬間がある。
 とある顧客の桐箪笥を修繕した時のことだ。80年前曾祖母の嫁入り道具だったその桐箪笥は既に3世代の時間を超えていた。しかし思い入れが強くこれから孫、ひ孫の代まで修繕して使用したいという。そのいわゆる“古びた”古箪笥は KIJIN の手を介して新品同然に修繕され顧客のもとに戻されるが、石川氏はその時の顧客の表情が忘れられないという。「言葉にならない表情だったんです、単純に感動とも驚きともいえない表情で…大切なものには必ず持ち主の思いが強く含まれていて、それを日々使うことで“想い”や“物語”を積み上げることができる。桐箪笥を通じてそれが何より貴重なのだと気付きました」 KIJIN が作り上げたい世界観がひとつ完成した瞬間でもあった。
 KIJIN のプロダクトに年齢や性別はあまり関係がない。しかし人間が百年生きられない中、プロダクトを百年使用し続けてもらうのは簡単ではない。生活環境やその時の時代背景に大きく左右されるからだが、この点について石川氏は意外にも「百年後の使用方法は問わない」という。その人のライフスタイルに沿った形であれば良く、使い方や思いの積み上げ方はその人それぞれにあってよいからだと言う。「その時その時で修繕をしながら何世代にも継承していくって、なんとなく日本人っぽい」と感じているからだ。耐久性がある = 良いものではなく、そこに何かしらの使用する理由が重なっているから良いものになるという彼の言葉は非常に心に響いた。
 古くから日本人と馴染み深い木。KIJIN が次の時代へ目指すものは単純に百年の耐久性がある木のプロダクトではなく、木という素材を通じ、その裏側にある利用者の思いを重ねることではじめてプロダクトとして帰結するのだ。何世代にも渡る利用者の思いはさながら年輪のようでもある。その年輪が広がれば広がるほど“モノを大事にする”という古き良き日本人らしさが新しい時代に改めて見えてくるのかもしれない。

※1. 林野庁の都道府県別森林率・人工林率(平成29年3月31日現在)
http://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/genkyou/h29/1.html

耐久性がある=良いものではなく、
そこに何かしらの使用する理由が重なっているから良いものになる


▲大切なものを手で「包む」という日本古来の美しい所作をデザインしたカップ、コーヒーなどの普段使いにも、贈り物にも

▲外国人旅行客にも大人気という箸セット。まずはここからはじめてみては。木材から加工まで全て国内産だ

▲神田明神とのコラボレーションから生まれた一品。手触りや香り、開閉の音までKIJINの拘りが詰まっている

▲桐たんすの修理 Before After

▲赤いソファ

▲ウォルナット一枚板テーブル&キッチンキャビネット

▲「青山裕之公認会計事務所」欅一枚板オフィステーブル

▲喫茶と美容室 茶の間」

取材協力/株式会社 KIJIN
東京都中央区東日本橋3-3-3 3F

TEL 03-5809-7464 FAX 03-5809-7465

Circular Japan 編集部 【記事に関するお問い合わせ