2017年11月。21 回目を数える PARIS PHOTO に行ってきました。
パリの街角はすでにクリスマスのイルミネーションで輝きつつ、ちらほらとパリフォトの告知の
看板が目に付きます。規模の大きさを感じ取りつつ、当然想像も追いつかないと思っていたので、
心を空っぽに好奇心だけを携え会場に向かいました。
そこは驚きの連続。エネルギーに溢れた会場をレポートします。

取材/文 田渕 結

▲左 ギャラリーごとに壁の色もそれぞれ。私も見入ってしまいました。モノクロの光に吸い込まれます

▲右 こちらはアスファルトのままの地面。作品の配置が美しく観ていて気持ちが良かったです

場はシャンゼリゼ大通りとコンコルド広場の間に位置するグラン・パレ。1900年にパリ万国博覧会のために建てられた建造物で高さ 45メートル、全長240メートル、とてつもない大きさを誇ります。いきなり建物自体に圧倒されてしまいます。チケットは予めインターネットで購入することができ、チケットは30ユーロ(およそ\4,000)週末は32ユーロ。学生割引もありました。会期は四日間。週末は混雑が予想されたため、平日に行ってきました。地図を受付で渡され、いよいよ会場内に入ります。

 今回、パリ在住のアートコンサルタント CROSS ART Yoko Ichishima さんに同行していただき、巡り方や会場内のご案内をしていただきました。アーティストの作品を日本に紹介する仕事をされています。現場でのアート事情を回りながらお話を伺いました。

 会場に入るとあまりの広さに驚きを隠して進みます。もうその時点で色んなエネルギーを持っていかれそうな感じがしたからです。世界29カ国、190のギャラリーが集まっていて、ヨーロッパ、アメリカはもちろん、ドバイ、台北、香港、東京や京都など沢山の感性が集まっています。作品数はもう最早数えられないということになります。ひとつのブースにひとりのアーティストのブース、複数のアーティストもあり、見応えが充分というか、アートの洪水に呑まれそうになります。そんな時は、会場の端にあるカフェでおやすみします。ワインやカフェ。サンドイッチなどの軽食もあります。エスプレッソをひと口。ホッとします。本当に。

 ブースごとの設えー照明、壁の色、アスファルトのままのブースもあれば綺麗に絨毯が敷かれていたり、作品のイメージ、ギャラリーの雰囲気を演出しています。ブースごとに必ずと言っていいほど個性的なお花が飾られて、流石ヨーロッパと感心していると時間に追いかけられてしまいます。
 1950 年代頃から現代の作品まで記録写真や加工を施した写真までひとつのアート作品と捉えることができる数々。多岐に渡る写真が持ち合わせる幅を一斉に見ることができるのはパリフォトならではなのではないでしょうか。また、過去の有名写真家の作品を目の当たりにでき、その画力に魅了されます。デジタル化が進んでいく現在ではありますが、アナログの味わい、光の魔術にうっとりして、いつまでも立ち止まって見入ってしまったり。写真家が瞬間に押したシャッター、視線を落とし込んだその向こう側にある被写体。その時空に引き込まれます。 また昨今では紙以外にも写真がプリントできるようで薄いフィルムに施された写真が虫ピンで刺してあり、立体的なモチーフが浮かび上がります。加工ももちろんですが、立体的な作品もあり、今までの写真の概念は遥かに超えて創造豊かな作品を多く見ることができました。ひとつの作品から感じ取れる物語。作家の熱が伝わってきます。ディスプレイの仕方もユニークだったり斬新だったり各々が素晴らしく、工夫が豊かに溢れて、観る者を飽きさせません。額ひとつで印象が変わることも感じ取れました。もちろん鑑賞者の好みや感性があると思うので作品そのものの評価もそれぞれにあることと思います。

 会場内を巡っていると、デザイナーで写真家のカール・ラガーフェルドのサインが作品の脇に貼り付けてあり、彼のお気に入りを知ることができます。作品の感性を彼の目を通して感じ取れるのも、興味深く鑑賞することができる要素になります。
 コレクターの中には古い記録写真ばかりを集めたい方などもいるそうで、それだけ作品の需要の幅が広くあることを感じ取れます。戦時中の写真やストリートのスチールなど、当時の様子がカメラマンの目を通して知ることができます。
 日本の作品は細江英公、森山大道、荒木経惟をはじめ新進写真家の作品も多数。細江英公が撮影した三島由紀夫のポートレートなどは海外にも人気があるようです。

 会場に来ている方達も様々でコレクターや美術関係者、ご家族でバギーに赤ちゃんを連れたご夫婦、デートに訪れているようなカップルもちらほら、多種多様な人々が来ていました。
 ギャラリーブース以外にも写真集のショップも集結、おそらく数千冊ありそうな勢いです。
 このブースにたどり着いたのは会場に入ってから約5時間後。既に心も身体もいっぱいでしたが、振り絞ってひとまわり。もう一日改めて観に行きたいと後悔して日本に帰ってきてしまいました。

という半日の濃厚な初体験。
 一番に感じ取るのは、こうして大きなイベントがあり、しっかりとアートの経済があっていくこと。それだけ需要と供給のバランスがある程度取れているということが予想できます。もちろん投資目的の購入もあっていくこともありながら、取引は存在していると感じました。比較的低い金額設定の作品もあるようで、そうした作品を先物買いするコレクターもいるようです。
 作品を手にするということ、これをここに飾ったら素敵だろうなと想像しているだけでも心がふくよかになります。
 偏った見解かもしれませんが、日本ではまだまだ途上にあるように感じました。筆者含めてもっともっとアートの存在を生活の中に入り込ませ、豊かな時間を持つことが芸術を育て、私たちの生活、心の豊かさに繋がっていくと思います。
 日本では著名な作品展が多く開催され芸術は美術館で鑑賞するということに少し傾いているように思えてきました。社会におけるアートの存在理由を改めて感じ取ることができ、考えさせられました。

 今年も開催が決まっています。次回はまた違った視点が生まれていきそうです。11月のパリ。皆さんもぜひお楽しみください。

▲左 キュレーターの個性溢れるキャラクターにも興味津々。当然ながらみなさんお洒落でファッションにも目を奪われます

▲中 高い天窓から光が射して、壁だらけではありますが見上げると解放的でもあります

▲右 アートコンサルタント Yoko Ichishima さんと筆者。写真集も見切れいないほど。ニーズの高さを感じます

Circular Japan 編集部 【記事に関するお問い合わせ