第三弾「 酒杯 ぎんのとら」
取材&文/野口万紀子

お食事とお酒の組み合わせは無限大!意外なペアリングが楽しめるお店をご紹介するこのコーナーでは、女性視点でセレクトしたオススメのレストランをご紹介していきます。第三弾は、三軒茶屋の閑静な住宅街に佇む 2016 年オープンした「酒杯 ぎんのとら 」。バーテンダーから和食の店舗マネージャーを経て、下馬の住宅街に店舗を構えるに至った理由や、お酒や蔵元にに対する率直な思いなどを、オーナーの田村大介さんに伺ってきました。

野口:お店の周りが住宅街で驚きました!
田村:そもそも自分が行きたくなる店を作りたかったんです。更に自分の家の近くにあったらいいなと。皆さんが仕事で疲れて帰ってきて、家の近くで飲むスタイルを実践したかったというのが、この“ぎんのとら”のスタートでした。
野口:お店のある下馬という土地について教えてください
田村:何でしょう、人懐っこい人が多い感じがします。三軒茶屋駅からも歩けますが、また三軒茶屋とは違った色がありますね。この下馬という住所は三宿や五本木の辺りまで伸びている住所なので、その辺りからもお客さまがいらっしゃいます。近くに日本大学さんがありますが、少し前に学長さんにもお越しいただきました。学生さんは・・・さすがにまだですね(笑)
野口:“ぎんのとら”ってお店の名前、とてもかわいいですね
田村:ありがとうございます。普段からお酒は好きなのですが、以前あまりに飲むので“大酒飲みのとらちゃん”要確認って言われていた時期がありまして。そこから“とら”はきています。元々動物の名前は入れたかったのですが。ちなみに“ぎん”は吟醸の吟です。日本酒なので敢えて「吟」にはせず、ひらがなにしています。
野口:では日本酒との出会いについて教えてください
田村::出会いはそう早くはありませんでした、20代の最後から30歳くらいだったと思います。元々バーテンダーでしたのでいわゆる「食後のお酒」を扱う立場だったのですが、神楽坂の和食の店舗でマネージャーとなったのが個人的には転機だったと思っています。
野口:何か大きなポイントがあったと
田村:はい。バーは「食後のお酒」を飲ませるお店ですが、日本酒は「食中のお酒」じゃないですか。和食の店舗でマネージャーになって以降、次第に「食と日本酒の組み合わせは素晴らしい」と気づくことができました。実際にここ数年で蔵元も私の年齢くらいの人間へ世代交代が進んでおり、そういった意味での“変革期の日本酒”と出会えたことはラッキーだったかもしれません。
野口:その中でも印象的なものや、お好きなものはありますか?
田村:個人的には燗酒が好きですね。お店では冷酒の方が圧倒的ですが(笑)敢えて意識をしている部分でもあるのですが、あまりお店でお出しするラインナップが玄人好みにならないようにしています。
野口:玄人好みの方が日本酒好きの方には喜ばれるのでは?
田村:意外とそうでもないんです。お店のコンセプトにも重なりますが、ぎんのとらは「日本酒への入り口」として掲げています。簡単に言えばお酒のラインナップがあまりマニアックになりすぎないように、と心がけています。

▲色とりどりの酒器が静かに待つ。セレクトは全てオーナー田村氏によるもの

野口:日本酒を選ぶポイントは何かありますか?
田村:お酒を好きになるきっかけは蔵元本体だったり、そこで働く人だったりするんです。日本酒は商品なので、作っている蔵元の背景をよく見ることができますし、直接蔵見学へ足を運んだ蔵元のお酒は当然愛着も湧いてきます。その日本酒が好きだから蔵に行くのではなく、蔵に行ってより好きになる、の方が正しいかもしれません。
野口:その中でも今お店がオススメしているのがこの4種類ですね。
田村:はい、中野酒造の「ちえびじん」、府中誉の「渡船:わたりぶね」、高千代酒造の「たかちよ」、角口酒造の「北光正宗」です。
野口:敢えてこれらのお酒に共通している点があるとすればどこでしょう?
田村:味については言わずもがなですが、どの蔵元も共通して“美味しく消費者に飲んでもらいたい”という意志が伝わってきます。
野口:詳しく伺えますか:以前は極端に言えば「うちの日本酒が口に合わないなら飲まなくていい」というような蔵元も有りました。が、今は「美味しいお酒を作りたいので皆さんの意見を聞かせてください」という感じに変化したと思っています。言うなれば消費者側へ迎合しているのではなく、蔵元側も消費者目線で日本酒を作っているということでしょうか。最先端の日本酒は非常にまろやかで飲みやすく、飲食店としてもオススメしやすいのが良いですね。
田村:ではお食事のオススメを教えてください
野口:先程お話した北光正宗を利用した「鶏もも肉の大吟醸焼き」がオススメです。日本酒で焼いているので香りが良いのはもちろんですが、肉も柔らかく召し上がっていただけます。また「酒のあて五点盛り合わせ」や、「真鯛の漬け」も皆さんから好評をいただいています。


▲ところ狭しと並ぶ虎グッズを店内で見つけてみるのも楽しい

▲目にも鮮やかな酒彩が並ぶ。どれも一口で食べやすく日本酒を飲むにはうってつけだ

▲鶏もも肉の大吟醸焼きは常連客の間でも屈指の人気メニューだ
冒頭にもお話しましたが、食事とお酒を通して日本特有の「四季」を感じていただけるよう心がけています。特に“出汁感”と日本酒の合わせは個人的にもオススメですので、是非お店で試していただきたいですね

▲仕事で疲れた時、1人でふらっと寄ることができ、寄り添えるお店作りを目指しています。日々の疲れを癒やす1杯に、また日本酒の入り口に。皆さまをお待ちしております

酒杯 ぎんのとら
東京都世田谷区下馬3丁目38-13
03-6804-0157
18:00~26:00(L.O.25:30)
定休日:日曜
取材&文:
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  野口 万紀子

株式会社「 5TOKYO」 代表取締役
利き酒師 / プロデューサー
「日本の伝統とトレンドを人間の五感で繋ぐ」をテーマに、和酒を中心とした様々なイベントプロデュースやコーディネートを手掛ける。